研究概要 |
当研究は数学における計算可能性研究で重要な役割を果たす極限再帰性について,その論理的な構造,それと同等の作用をもつ原理(とくに実効的一様位相理論)との相互解釈,本質的に極限再帰性を必要とする多くの(ユークリッド位相で)不連続な関数族の計算可能性理論の解明・発展を目標にしている.さらに極限再帰性の計算としての概念基盤の究明なども目標にしている.これらに関して以下の成果をあげた.まず,極限再帰性と実効的一様位相という,互いに異なる理論における不連続関数の“列計算可能性"の同等性に関する一般論を展開し(人杉),また,極限再帰性の“計算認識"の基盤としてネーター位相(コンパクト性)を提案した(八杉).実際の連続体上の計算可能性に関しては,Fine-位相における計算可能関数のグラフに特徴的なgraph-directed setsに関するランダム反復アルゴリズムの理論を立てた(辻井を中心に,森,八杉).これによってgraph-directed setsに対する新しい見方が与えられ,またランダム反復アルゴリズムに多くの拡張モデルがあることが判明した.さらに計算可能性理論を確率分布に適用する試みがなされた(森).2次元Fine-位相における計算可能関数の積分論,Walsh-Fourier級数に関する計算可能性問題などについて多くの事実が得られた(森を中心に,辻井,八杉).これらはユークリッド空間における列計算可能性が極限再帰関数によって支配されるFine位相に関する数学である.極限再帰関数とΣ^0_1排中律など構成的原理の拡張に関する形式系上での相互関係の研究および計算機上の実装については,進行中である(小林,林(連携研究者)).
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