今年度は、昨年度に引き続き幾つかのヒルベルト空間の積空間上で定義された多重線形作用素の成すシャッテン-フォンノイマンクラスの作用素について研究した。このような研究はペートルやコボスらにより行われているが、まだ十分に研究されているとは言えない。本研究においては、特にn次元ユークリッド空間における2乗可積分関数の成すヒルベルト空間の積空間上で定義された、多重線形擬微分作用素について、シャッテン-フォンノイマンクラスの作用素族に属するための条件を研究した。具体的には、多重線形擬微分作用素のシンボルと呼ばれる関数がどのような条件を満たせば、どのシャッテン-フォンノイマンクラスに属するかを明らかにした。ただし、本研究で定義したシャッテン-フォンノイマンクラスは、ペートルやコボスらが定義した作用素のクラスとは少々異なるものであり、研究代表者が独自に定義したものである。得られた結果は、シンボルの遠方での減少度がある条件を満たせば、その減少度に対応したシャッテン-フォンノイマンクラスに属するというものである。また今年度は多重線形カルデロン-ジグムント作用素のウェーブレットによる特徴付けを研究した。本研究においては、多重線形カルデロン-ジグムント作用素のウェーブレットによる近似対角化がどのようなものになるかを研究した。今後は得られた評価を基に、重み付き関数空間上における多重線形カルデロン-ジグムント作用素の解析を行う予定であり、これらの結果は、実解析の様々な問題に応用可能であるという意味で重要なものである。
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