本研究の目的は、ウェーブレットによる多重線形カルデロン-ジグムント作用素の理論の構築とその応用である。平成23年度はこの研究目的に関連して、平成22年度に引き続き多重線形擬微分作用素の研究を行った。具体的には幾つかのヒルベルト空間の積空間上において定義された多重線形擬微分作用素の特異値の評価の研究を行った。このような研究はペートルやコボスらによって行われているが、まだ十分に研究されているとは言えない。本研究では、特異値の評価を多重線形擬微分作用素の表象を用いて行い、作用素がシャッテン-フォンノイマンクラスに属するための表象の条件を与えた。またさらに作用素がディクスミエクラスに属するための表象の条件を研究した。これらの結果は、コンヌの非可換幾何学における量子化の理論との関連で、興味深いものである。またさらに平成23年度は、多重線形カルデロン-ジグムント作用素のウェーブレットによる特徴付けを、前年度に引き続き研究した。この研究は、多重線形擬微分作用素において、ウィルソン基底やガボールフレームを用いて得られた作用素の近似対角化に関する研究代表者の結果と同様な評価を、多重線形カルデロン-ジグムント作用素に関して、ウェーブレットを用いて与えたものである。この研究により得られた結果は、重み付き関数空間上における多重線形カルデロン-ジグムント作用素の解析に応用でき、またそれにより、実解析の様々な問題に応用可能であるという意味で重要なものである。
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