本研究課題の目的は完全WEB解析におけるストークス幾何の性質を研究することで、さまざまな重要な問題、例えばストークス曲線上のストークス接続係数の決定等の解決を行うことである。 研究代表者は、前年度に、ストークス幾何をリーマン面上にもちあげることで深さ関数というストークス曲線の複雑さと依存関係を表わす指標を導入した。この深さ関数は、ストークス幾何を帰納的に扱うことを可能とする有用な道具である。実際、この深さ関数を用いることで、実線破線条件を満すストークス幾何が唯一存在することを示すことが出来る。 本年度は、新しいストークス曲線も含む全ての曲線に対してそれ上のストークス接続係数を求めるアルゴリズムを構成した。また、実際にそのアルゴリズムを用いることで全てのストークス接続係数が求まることを、前年度構成した深さ関数を用いることで示した。この場合、深さ関数はストークス接続係数を求める順番も示しており、可能性の証明のみならず具体的な計算においても重要な役割を果すことに注意したい。 本研究課題と関連する他の結果として、パドバ大学のLuca Prelliとの共同研究で、漸近解析において重要な強漸近展開の理論を、正規交差とは限らない多様体に沿っての漸近展開の理論に拡張した。この仕事は、多変数における完全WKB解析の理論に於ても役立つと考えられる。 以上の結果は学会等や研究集会等で発表し、また、論文として出版する予定である。
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