研究概要 |
今年度に成果の得られた研究は以下の通りである. 1. 実ユークリッド空間上のBargmann型変換とよばれる大域的フーリエ積分作用素の像として特徴付けられるSegal-Bargmann空間とよばれる複素ユークリッド空間上のある種の整関数からなる再生核ヒルベルト空間に作用するBerezin-Toeplitz作用素の有界性や変形量子化の評価を考察し, 従来の結果を大幅に改良し精密化した. 特に変形量子化の量子化パラメータ依存性を正確に記述する公式が得られた. 本研究は, 当該分野における従来の研究とは手法が全く異なっているが, 擬微分作用素論及び相関数から定まる正準変換と熱流に基づいた本来あるべき手法による単純な研究である. 2. 2007年度後半から考察していたシュレーディンガー写像の初期値問題の解法について2つの本質的改良を行い, 最終的には閉リーマン多様体からコンパクトな概エルミート多様体へのシュレーディンガー写像の初期値問題の解法としてまとまった. 鍵は, properly supportedな擬微分作用素によって誘導東上のある種のゲージ変換を構成することにより, 概複素構造の共変微分がもたらす悪影響を解消することである. 結果よりも, 誘導束の断面に作用する擬微分作用素を初めて実用化したこと, 及び, 全ての先行研究で仮定されていた値域のケーラー性は単独の線型シュレーディンガー型発展方程式論における「悪い1階項がポテンシャルをもつための十分条件」に相当することが確認できたこと, の2点の方が重要かもしれない. さらに, 小野寺栄治氏(東北大理→九大数理)と共同で, 筆者の方法の3階方程式版をの構築して, 概エルミート多様体上の閉曲線運動を記述する3階分散型写像流の初期値問題の解法を与えた.
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