今年度の活動は以下の通りである。 1.小野寺栄治氏(高知大学)と共同でコンパクトなケーラー多様体上の曲線運動を記述する4階分散型写像流の初期値問題の解法を考察した。解の存在定理は得られているが、解の一意性を証明するのに苦戦している。さらに可積分系である特殊な場合の特殊な取扱いについても考察している。これらを解決すれば、これまでの筆者の非常に一般の設定におけるシュレーディンガー写像の初期値問題の研究や小野寺栄治氏の3階分散型写像流の研究と合わせて渦糸運動等を記述するモデルを含めた概エルミート多様体値の分散型写像流の研究は基本的事実が解明されたことになりひと段落する。 2.円盤上のBerezin-Toeplitz作用素を、円上のWeyl擬微分作用素とある種のFourier積分作用素を通じてEgorov対称なWeyl量子化やその亜種であると捉えるための理論を構築する研究を始め現在進行中である。これがまとまると、双曲平面上の準古典解析のための道具になると思われるので、単に基礎解析学の事実の開拓でなく、他分野への応用へと発展する可能性がある。これとは別に、通常の意味での双曲平面の余接空間上の量子化理論も整備開拓して応用へと発展させる研究も重要であり、なるべく早くこちらに進出したい。 3.片山聡一郎氏(和歌山大学)、多久和英樹氏(同志社大学)、砂川秀明氏(大阪大学)と共同で、国際研究集会「偏微分方程式と数理物理学」(2010年11月16日~18日、芝蘭会館別館、京都市)を開催し、筆者は組織委員長を務めた。招待講演者10人(国外5人、国内5人)、参加者80人であった。ユークリッド空間上の偏微分方程式が中心の研究集会であったが、古典物理学のモデル方程式の数学解析の現状を知ったことは有益だったと思う。
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