研究概要 |
20年度は3月から8月まで約半年インド統計研究所デリーセンターに滞在し, R. Bhatia教授や, K. R. Parthasarathy教授, R. Bhat教授などと行列解析・量子情報などに関する交流を行った。特に, R. Bhatia教授とはレウナー行列の正定値性が作用素単調性と対応するというレウナーの結果に比し, 条件付負性が作用素凸性に, また条件付正性が作用素凸関数のt倍に対応することを論文発表した(Math. Annalenに掲載)。この結果の応用として, レウナー行列の固有値分布(正・負・ゼロ)数を決定した。また, r乗(0<r<1)に対応するレウナー行列の無限分解可能性の初等的証明や, 作用素凸関数の逆が作用素単調である(安藤の結果)ことの別証明をレウナー行列の解析により与えた。またKwong行列の解析も同様の手法で行った。これらの解析では, 「条件付負性より逆数の無限分解可能性が従う」というR. Bapatの結果の有効性を確認し, 無限分解可能性に対する新たなアプローチを示した。また, ヤングの意味で互いに共役な関数の組に対するヤング不等式に着目して, 正線形汎関数の中でトレースを特徴づけるという論文を大学院修士生と著した(Linear Algebra amd its Applicationに掲載決定)。インドにおいてはラマヌジャン数学会年会での「調和解析」分野にて, 非作用素単調関数とトレースに関してシンポジュウム招待講演を行った。不定値内積空間上の有界線形作用素全体の#自己同型写像に関する論文原稿も1編作成したが, 掲載には至っていない。
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