24年度は Loewner 行列と Kwong 行列に関する研究については、橘慎太郎氏(大学院修士課程2年)と共著論文 On Loewner and Kwong matrices を発表し既に雑誌 Scientiae Mathematicae Japonicae に掲載されている。本論文では安藤毅氏による正の実軸全体上で定義された正値作用素単調関数 f に対し、p 乗し f を施し 1/p 乗(0<p<1) しても作用素単調関数が得られるという結果の正の整数に関わる部分に対する別証明を、一般化 Loewner 行列の半正定値性を示すことにより与え、また対応する一般化 Kwong 行列についても全く同様の議論によりその半正定値性を導いた。本論文の結果は、京都大学数理解析研究所研究集会「幾何学及び確率論的手法による作用素の構造解析の研究」において Semi-operator monotonicity and derivatives for operator monotone functions というタイトルで発表した。一方、伊藤寛和氏と佐藤祐氏(どちらも大学院修士2年)とは、共著論文 Numerical radius of Moore-Penrose inverse(上述雑誌掲載決定)を発表した。可逆な作用素がそれ自身およびその逆の数域半径が1以下であることがユニタリー性の特徴付けであるという Stampfli の結果に対し、可逆ではない作用素に対しては Moore-Penrose inverse を扱い、それに関するある仮定の下でその結果の一般化を導いている。また、本年度は韓国・インドでの R. Bhatia 氏に関わる研究集会で招待講演を行い、自著「マトリックスの世界」の第2版を著した。
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