平成22年度は、21年度に引き続き、主要部の係数が実解析的で時間変数のみに依存する2階双曲型方程式に対して、そのコーシー問題のC^∞適切性の特徴付けについて研究し、以下の結果を得た。 (1)コーシー問題がC^∞適切になるための十分条件を得た(空間次元に制限を置いていない)。低階が実解析的であるという前年度までの研究での仮定を取り除くことが出来た。これは本研究ではまだまだ先の問題だと考えていたものであり、本研究を一段階上に進めるものである。本研究を通して開発した方法・手法を適用することにより、将来の目標であった問題の一つを解決することが出来た。 (2)主要部の係数が実解析的で空間次元が2の場合に(時間・空間あわせて3次元)、C^∞適切であるための必要十分条件を得た。また、主要部の係数が時間変数の多項式であるときにも、C^∞適切であるための必要十分条件を得た。 (3)不十分ではあるが、滑らかな固有ベクトルを用いて2次形式が表現できることに注意して、C^∞適切であるためのいくつかの必要条件を得た。 (4)前年度に引き続き(1)、(2)の結果を2重特性的な高階双曲型方程式に拡張することを考えて、いくっかの基本的な結果を得た。但し結果をきれいな形で与えることは今後の課題である。 (5)(1)の問題に対して解の特異性の伝播について考察し、特異性がbroken null bicharacteristicsに沿って伝播することを示した。 (1)、(2)、(3)の結果を論文としてまとめて現在投稿中である。また既にセミナー及び研究会において、得らわた結果について講演を行った。この結果は双曲型方程式の研究において、基本的な結果になるものと考えている。
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