研究概要 |
偏微分方程式の振動理論の統一的体系の確立のために,関数変数を持つ非線形双曲型方程式とp(x)-Laplacianを持つ半分線形,準線形楕円型方程式に対して振動定理を得た.関数変数を持つ非線形双曲型方程式については,主要部に関数変数を持つような中立型双曲型方程式に対して,2階中立型関数微分不等式に帰着させ,それから1階Riccati微分不等式に変換し,いわゆる,Riccatiの方法を用いて振動結果が得られた(Nonlinear Oscillations, Vol. 14, 2011に掲載).p(x)-Laplacianを持つ半分線形楕円型方程式に対してRiccati方法を用いて振動判定条件が得られ(Nonlinear Analysis, Vol. 74, 2011),また,Picone等式を確立し,Sturm型比較定理を得た(Nonlinear Analysis, Vol. 74, 2011に掲載).更に,p(x)-Laplacianを持つ準線形楕円型方程式が外力項を持つ場合について,すべての解が振動するか,ある収束条件を満たすかという結果を得ることが出来た(Toyama Mathematical Journal, Vo1. 34, 2011に掲載).2011年8月にイギリスのLoughborough大学で開催された国際研究集会「Equadiff2011」において,「Picone-type inequality and Stumian comparison theorems for quasilinear elliptic operators with p(x)-Laplacians」の題目でポスター発表を行った.また,岐阜大学で開催された研究集会「岐阜大学における微分方程式セミナー」において講演題目「p(x)-Laplacianを持つ半分線形楕円型方程式に対する振動定理-via Riccati method-」の口頭発表を行った.更に,富山大学で開催された研究集会「富山解析セミナー2011」において講演題目「p(x)-Laplacianを持つ半分線形楕円型方程式に対するPicone等式とSturm型比較定理への応用」の口頭発表を行った.特に,この研究集会「富山解析セミナー」は富山大学の卒業生,修了生で数学の研究者になっている数学者を招待し,富山大学理学部数学教室の教員と共に研究発表を行う貴重な場であり,大変有益な情報交換が出来た.今年度に得られた研究成果は,変動指数を持つような偏微分方程式の振動理論の萌芽的な成果であり,今後の研究の大いなる進展の基礎となり得る貴重な研究実績を上げることが出来たと確信している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書には,p(x)-Laplacianを主要部に持つ半分線形楕円型方程式に対して,Sturm型比較定理を確立することに主眼が置かれていたが,それについては,Picone等式が確立出来て目的のSturm型比較定理を得ることが出来た.更に,より一般の方程式に対しても結果が得られる見込みが立った.
|
今後の研究の推進方策 |
平成20年度から平成23年度にかけてp-Laplacianを主要部に持つ楕円型方程式,関数変数を持つ偏微分方程式の振動理論を研究してきたが,平成23年度にp(x)-Lapalacinaを主要部に持つ楕円型方程式に対して研究することが出来た.この方程式は,いわゆる「変動指数」を持つ方程式のクラスに属しており,今後は更に広いクラスの変動指数を持つ微分方程式の振動理論の確立を推進したい.それには,後1年の研究期間では短いので,研究計画最終年度前年度の応募を既に行った.
|