研究課題
本研究の目的は、確率空間上のBanach関数空間の構造を、マルチンゲール理論を用いて解析すること、及び、Banach関数空間の理論のマルチンゲール理論への応用を研究することにある。本年度は、申請時当初の計画を一部変更し、主にマルチンゲールのための弱型極大不等式が成り立つBanach関数空間Xが持つ性質を研究し、その結果、そのような不等式が成り立つ空間Xの特徴付け(必要十分条件)を得ることができた。但し、空間Xにおけるマルチンゲールfのための弱型極大不等式とは、極大過程MfのXにおける弱型ノルムを概収束極限f∞のXにおけるノルムの定数倍で評価する不等式のことで、Xにおける弱型ノルムとは、L_pノルムからLorentz空間L_p,∞のノルムを定義するのと全く同じ方法を用いて、(L_pの代わりに)Xから導かれるノルムのことである。Xが再配分不変性を持つ場合には、Xにおけるマルチンゲールfのための弱型極大不等式が成り立つことは、これまでの研究結果から既知であるが、逆に、Xにおけるマルチンゲールのための弱型極大不等式が成立してもXが再配分不変であるとは限らない。そのような例を構成することもできた。他方、Xがある種の荷重Orlicz空間である場合には、Xにおけるマルチンゲールのだめの弱型極大不等式が成り立てば、Xが再配分不変である(より正確には、Xのノルムを同値的に付け替えることにより再配分不変にできる)ことを証明することができた。以上の結果は、論文にまとめて投稿する予定であり、現在準備中である。
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Mathematische Zeitschrift
巻: 265巻,No.4 ページ: 865-887