研究課題/領域番号 |
20540160
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
菊池 万里 富山大学, 大学院・理工学研究部(理学), 教授 (20204836)
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キーワード | マルチンゲール / Banach関数空間 / 再配置不変空間 / マルチンゲール変換 / マルチンゲール不等式 |
研究概要 |
本研究の目的は、確率空間上のBanach関数空間の構造を、マルチンゲール理論を用いて解析すること、及び、Banach関数空間の理論のマルチンゲール理論への応用を研究することにある。本年度に実施した研究の結果、次の2つの成果を得た。 1.XをBanach関数空間とし、Pを絶対値が-様に1以下であるような可予測確率過程の全体とする。v=(v_n)∈Pとし、f=(f_n)をマルチンゲールとするとき、fのvによるマルチンゲール変換をv*fで表すことにする。このとき、v*fの概収束極限のXにおけるノルムの値が、fの概収束極限のXにおけるノルムの値の定数倍を超えないという不等式(Burkholderの不等式の拡張)が成り立つようなXの特徴付けを与えることができた。 2.XをBanach関数空間とする。2つのマルチンゲールf=(f_n)とg=(g_n)の概収束極限f_∞とg_∞の間に、不等式f_∞≦g_∞が成り立つとき、fの極大関数MfのXにおけるノルムの値が、gの極大関数MgのXにおけるノルムの値の定数倍を超えないという不等式が成り立つようなXの特徴付けを与えることができた。また、不等式Mf≦Mgが成り立つとき、f_∞のXにおけるノルムの値が、g_∞のXにおけるノルムの値の定数倍を超えないという不等式が成り立つようなXの特徴付けも与えることができた。 Banach関数空間XにおけるBurholder-Davis-Gundy型の(片側)不等式が成り立つXの特徴付けを与えることは、本研究の重要な目的の1つであるが、上記の2つ研究成果はいずれもこの目的を達成する上で、重要な役割を演ずると思われる。その意味で、これらの研究成果の意義は大きいが、それだけにとどまらず、これらの研究成果はそれ自体、興味深い内容であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
劣マルチンゲールのDoob分解の為のノルム不等式が成り立つBanach関数空間の構造の解明、Banach関数空間Xに付随して定義されるマルチンゲールのHardy空間H(X)とXの関連の解明、マルチンゲールの平均振動と極大関数の間にノルム不等式が成り立つようなBanach関数空間の構造の解明など、マルチンゲール理論がBanach関数空間の構造を解析する為に有用であることを示す研究成果が既に得られており、更に、これらに加え、上記の本年度の研究実績の概要に記した成果も得られている。以上のことから、「Banach関数空間の構造を、マルチンゲール理論を用いて解析する」という本研究課題が、計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、当初の計画以上に進展していると評価できるものの、まだ達成されていない重要な目的の1つとして、Burkholder-Davis-Gundy型の(片側)不等式の成立するBanach関数空間の構造の解明がある。この問題は、当初から予想されたように、かなり難しい部分を含む。来年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、この問題を解決することに尽力したい。難しい問題であることから、場合によっては完全に一般的な設定での考察を断念し、有界閉区間[0,1]のように、扱いやすい確率空間上のBanach関数空間に限定して研究を進める必要があるかもしれない。
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