研究概要 |
1. リース空間におけるショケ積分の収束定理 非加法的測度論における積算概念として重要なショケ積分は,Duchon, Riecanらにより研究されたリース空間値リーマン・スティルチェス積分論を用いて河邊により定式化され,共単調関数に対する加法性などの基礎的性質が確立された.この研究では,リース空間値非加法的測度に対するショケ積分論をさらに進展させ,実用化することを目的とし,以下の成果を得た. (1)リース空間の滑らかさの新概念として,単調関数連続性条件(有界閉区間上で定義されたどんな単調関数の不連続点も,常に高々可算となる性質をもつリース空間の特徴付け)を導入し,この条件のもとで,リース空間値ショケ積分に対する単調収束定理と優収束定理の定式化に成功した. (2)数多くの具体的かつ有用な関数空間,例えば,ルベーグ関数空間Lp[0,1](0<p≦∞)は,単調関数連続性条件を満たすことを示した. 2. 直積空間上のリース空間値非加法的測度の連続性と拡張可能性 直積空間X×Yの直積集合体上の測度λに対し,そのX方向,Y方向への射影測度をそれぞれμ,υとする.1953年にMarczewskiとRyll-Nardzewskiは,測度υ,λが有限加法的な場合に,λの連続性とコンパクト性に関して次の2つの結果を得た.M-RN定理(I):μが連続,υがコンパクトならばλは連続.M-RN定理(II):μとυがともにコンパクトならばλもコンパクト.この研究では,M-RN定理(I)は,実数値非加法的測度λに,非加法的測度論における擬加法性条件として広く利用される一様自己連続性を仮定すれば成立すること,一方,M-RN定理(II)は,一様自己連続性よりも弱い弱漸近零加法性を仮定するだけで成立することを示した.今回の結果をリース空間に値をとる場合へ拡張することが今後の課題である.
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