研究概要 |
1.リース空間値非加法的測度の正則性とショケ積分の収束定理への応用 ボレル集合上での測度の値を,より取り扱いやすい閉集合やコンパクト集合上での値で近似するために必要な測度の正則性の諸概念は,非加法的測度論を展開する際にも非常に重要である.この研究では,位相空間上のリース空間値非加法的測度の正則性に関する諸概念の性質をより詳細に調べ,ショケ積分の収束定理の定式化に応用することを目的とし,以下の成果を得た. (1)リース空間に可分性と多重エゴロフ性を仮定すれば,任意の完備距離空間または局所コンパクト空間上のすべてのτ-正則な弱零加法的リース空間値ファジィ測度は自動的にラドンとなることを示した. (2)非加法的測度の正則性条件として,完全o-連続性,完全c-連続性,完全k-連続性の概念を導入し,これらの条件と,下半連続関数の単調増加有向列,上半連続関数の単調減少有向列,無限遠点で消滅する上半連続関数の単調減少有向列のショケ積分の単調収束定理の成立性が同値であることを示した. 2.リース空間値ショケ積分の有界収束定理 非加法的測度による積算概念として重要なショケ積分の単調収束定理や優収束定理の成立性は,測度の連続性と密接に関連している.しかし,測度収束する関数列のショケ積分の有界収束定理は,非加法的測度に連続性を仮定しても一般には成立しない.この研究では,リース空間値非加法的測度のショケ積分の有界収束定理が成立するために,非加法的測度に課すべき条件を見いだすことを目的とし,以下の成果を得た. (1)測度収束する関数列のショケ積分の有界収束定理の成立性と,非加法的測度の自己連続性が同値となることを示した. (2)リース空間値単調関数の不連続点の濃度に関する条件である単調関数連続性条件をリース空間に仮定すれば,法則収束する関数列のショケ積分の有界収束定理が,すべてのリース空間値非加法的測度に対して成立することを示した.
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