研究概要 |
1.共単調加法的汎関数のショケ積分表示 関数空間上で定義された共単調加法的汎関数のショケ積分表示に関する命題は,リース型積分表示定理とよばれ,非加法的測度による積算概念として重要なショケ積分の特徴付けを与えている点で非常に重要な研究対象である.この種のリース型積分表示定理は,関数空間が本質的有界な可測関数からなる空間の場合のSchmeidlerの結果や,局所コンパクト空間上のコンパクトな台をもつ関数からなる空間の場合の成川らの結果が知られている.この研究では,これら従前の結果を含み,さらに無限次元空間上の非加法的測度の研究へも応用可能とすべく,正則空間上の有界連続関数からなる空間の場合を含むようにリース型積分表示定理の拡張を行い,以下の成果を得た. (1)共単調加法的汎関数のDaniell-Stone型の積分表示定理として知られているGreco定理から,リース型積分表示定理を導く汎用的な手法を発見し,成川らの積分表示定理の別証明と改良を与えた.さらに,汎関数の定義空間が無限遠点で消滅する関数からなる空間や,正則空間上の有界連続関数空間の場合にも,リース型積分表示定理が成立することを示した. 2.リース空間値非加法的歪直積測度へのMarczewski and Ryll-Nardzewski定理の拡張 実数値非加法的歪直積測度の連続性に関するM-N定理(Marczewski and Ryll-Nardzewski定理)を,リース空間に値をとる場合に拡張することを目的とし,以下の成果を得た. (1)リース空間値非加法的測度の一様自己連続性の概念の拡張として,一様(σ,∞)-漸近的零加法性の概念を新たに導入し,M-N定理をリース空間の枠組みで定式化した. (2)十分滑らかな,必ずしも斉次的でないノルムをもつリース空間(complete,σ-gauge Riesz space)に値をとる一様自己連続な非加法的測度は,常に一様(σ,∞)-漸近的零加法性を満たすことを示し,M-N定理がリース空間の枠組みでも成立することを示した.
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