もっとも大きな成果としては、以前から研究し続けてきたCorach-Porta-Rechtのファイバー束の接続幾何学的考察を、正定値行列についてのHiai-Petzの幾何に適用できたことである。Hiai-Petzの幾何学はRiemann計量主体の結果であるが、私自身は計量主体というより、Corachたちの方向と同様に、その上部構造としてのファイバー束構造に興味を持っていた。Hiai-Petzの計量幾何をこのような接続の幾何として計量と無関係に再構築し、また計量としては新たにユニタリ不変ノルムによってFinsler計量を導入することができた。さらにこの幾何学において測地線の最短性について、ノルムが「強凸」である場合には測地線自体が唯一の最短曲線であり、強凸でない代表的なKy Fanノルムについては、測地線以外に最短曲線が構成できることがわかった。また、前者の拡張として、一般のquasi-meanと呼ばれる2種類の平均族が測地線となるような幾何学を論じることができた。これらが、以下に挙げてある論文3編で、これらの結果によって、招待講演とはいえないかもしれないが、分科会における特別講演として、1時間の講演を行うことができた(講演自体は昨年度末)。その他の作用素不等式については、国内外の共同研究ができて、2編の論文として成果を出すことができた。
|