研究概要 |
(1)量子情報理論の研究においては,Wigner-Yanaseによるskew-information及びそれをDysonが拡張したWigner-Yanase-Dyson skew informationを調べることは重要な課題である.本研究では新たに,一般化したWigner-Yanase skew informationを導入し,量子状態の下での2個のオブザーバブルの一種の分散の積が,非可換性を表す量で下から評価されるという不確定性関係を,トレイス不等式の立場から証明した. (2)量子情報理論の研究においては,情報量の評価のために,行列やtrace class operatorのトレイスに関する不等式を,一般論の立場から研究することは重要である. 2次の行列について,正定値行列の積のトレイスについて以下のような不等式を証明した. 2個の2次の正定値行列T,Aについて Tのべき乗と,Aのべき乗とを考え,それらの積をいろいろ入れ替えたときのトレイスにかんしてある種の不等式が成立することを示し,さらにそれらの不等式が2次の特性からきており,そのままの形では一般の行列には成立しないことの反例をあげた.
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