1.有限連結グラフにおける非分離2-因子(Gをグラフとし、Fをその2-因子としたとき、G-Fが連結であるようなもの)という概念を提出し、偶数次数有限正則グラフが非分離2-因子を持つためのGの位数についての最良の十分条件を与えた。非分離2-因子は、2-因子を持つグラフのクラスにおける新しい連結性を表しているものと考えられる。 2.ランダムAharonov-Bohm磁場を持つシュレーディンガー作用素の、状態密度関数のスペクトルの下端での漸近挙動、所謂Lifshitz tailと呼ばれる現象について調べた。その結果、δ-磁場の位置は周期的に配置し磁場の強さをランダムにするモデルと、δ-磁場の位置をポアソン分布に従ってランダムに配置するモデルの両方を含んだ広いクラスのランダムAharonov-Bohm磁場を持つシュレーディンガー作用素に関して、大偏差原理を援用することにより状態密度関数についてLifshitz tailと呼ばれる現象(スペクトルの下端での状態密度関数の立ち上がりが指数関数的に緩やかである)が生じることを証明した。これはスペクトルの下端でのAnderson局在(固有値が稠密に存在し、対応する固有関数が指数関数的に減衰する)の可能性を示唆している。 3.周期的Aharonov-Bohm磁場および一様磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルの構造を調べた。最小Landau準位については、その存在条件や固有空間の構造、また絶対連続スペクトルの出現などが、基本領域を貫く磁束の量によって決定されることを調べてきたが、さらに高いエネルギーのLandau準位について、その構造が明らかになりつつある。特に第二Landau準位の存在条件とその固有空間の構造、および絶対連続スペクトルの存在などが示された。
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