本年度の研究計画に従って以下のような考察・議論を遂行した。q-正規作用素のもつ「自己のスカラー倍にユニタリ同値になる」性質に関連してバナハ空間上の擬可換性について、昨年度報告した一様凸バナハ空間上の擬可換性に関する議論を踏まえて連携研究者である神奈川大学の長宗雄教授や海外の研究者B.P.Duggal、R.Harte教授と討議を重ねた。その結果、バナハ空間上の正規作用素間(片方がパラ正規作用素の場合も含めて)の擬可換性が標準の可換性になる特徴付けを多様な観点から与えた。また、q-変形作用素の枠組みについて、標準作用素の体系を考慮してq-ハイポ正規作用素を含むq-paranormal(q-パラ正規)作用素という新たな概念を定義し、非有界性やスペクトル等の基本的性質を与えた。この概念は将来の変形作用素の研究発展に寄与するものと期待される。次に、q-正規作用素の標準正規作用素への拡大問題について議論を積み重ねた。ヒルベルト空間上の標準の(非有界)正規作用素はスペクトル分解可能であること、さらに「正の変数qが1より小さい場合、q-正規作用素が両側重み付きのシフト作用素ならば、その作用素は正規拡大をもつ」ことを踏まえて、研究協力者であるヤギエオ大学のF.H.Szafraniec教授と討議を継続して行った。その結果以下の事が判明した。正の変数qが1より大きい場合は、q-変形作用素は有界、非有界いずれの場合も起こり、またそのスペクトルも複素数全体、空集合となる極端な場合が起こる。これと同様に、正の変数qが1より大きいq-正規作用素はけっして標準の正規作用素拡大をもたない事を示す事が出来た。上記の内容の一部は6月に開催された国際会議において発表した。
|