研究概要 |
周期的な点相互作用に従う1次元Dirac作用素のスペクトルについて考察を行った。スペクトラルギャップの幅の漸近的性質と、作用素に含まれるパラメータの数論的性質の関係を得た。Dirac作用素についての従来の研究では、この種の関係は全く得られていないので、当該研究で得られた結果は重要かつ画期的であるといえる。ここで、得られた結果のうちで典型的なものについて述べる。κ∈(0,2π)とし、βを0でない実数とする。格子{0,κ}+2πZをГと表す。L^2(R)^2上のDirac作用素Hを次で定める: H=-iσ_1(d/dx), x∈R-Г Dom(H)={(f_1, f_2)^T; f_1∈H^1(R), f_2∈H^1(R-Г), f_2(x+)-f_2(x-)=-iβf_1(x) for x∈Г} ただし、σ_1はPauli行列を表す。Hは自己共役作用素であり、そのスペクトルはバンド構造を持つ。Hのスペクトラルギャップを自然に並べたものをG_j (j∈Z)とする。τ=2π-κとおく。κ_0=τ/κは無理数であると仮定する。 θ=((1-κ_0)/π)tan^<-1>(2/β), W=2π^2(4+β^2)^<1/2>|β|/(4π^2+β^2κτ) とおく。また、x∈Rに対し、‖x‖=min{|x-n|; n∈Z}とし、 M_±(κ_0,θ)=liminf_<q→∞>‖±qκ_0+θ‖(複号同順、qは整数) とおく。M±(κ_0,θ)を非斉次近似定数とよぶ。得られた結果は次のように述べられる。 定理liminf_j→∞j|G_<±j>=W M_<±>(κ_0,θ)
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