研究概要 |
1.単位円板上の有界解析関数空間における合成作用素の問題については,研究分担者の泉池敬司教授と共に,有限個の合成作用素の一次結合のcompact性を完全に特徴づけ,essential normの評価を与えた.norm評価については係数の実部が正の場合の成果を得たが,関連する問題も浮き彫りにされ,引き続きの課題となった.合成作用素の一次結合の問題はこの分野の研究者の注目を集め,いろいろな関数空間で考えられるようになった.大野は引き続き研究協力者の細川卓也,Helsinki大のNieminenらとBloch空間におけるcompact性について特徴づけを行なった。一次結合についての研究はC*環,作用素環への新たな展開が予想される.有界調和関数空間における合成作用素については,泉池教授と共に,その位相構造は有界解析関数空間の場合と同値であることを示し,荷重合成作用素を定義することにより,そのessential normの評価を与えた.乗法が定義できない「調和関数空間」に定義された荷重合成作用素はそれ自体興味あるものであり,更なる性質の考察が望まれる.Bloch空間については,そこで作用する合成作用素と微分作用素の積についての有界性,compact性も特徴づけた. 2.共同研究者の泉池は,New York State大のYang教授と,1変数の内部関数を利用して,2変数のHardy空間の中にねじれるようにして作られる逆不変部分空間は1変数のBergman空間を一般化した構造を持つことを示した.2変数のHardy空間でクロス交換子がランク1になる,ある条件をみたす不変部分空間の構造を決定した.Fudan大のGuo教授と,1変数のフォック型の空間における合成作用素に対する、スペクトル,サイクリック性,ハイパーサイクリック性,不変部分空間などの基本的問題を解決した。
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