研究概要 |
今年度の研究では,双曲型の線形発展方程式の抽象理論とそのDirac方程式への応用,2階の楕円型作用素であるSchroedinger作用素に類似の4階の作用素:Laplacian^{2}+c|x|^{-4}の自己共役性(cが実数のとき)とm-accretivity(cが複素数のとき)で論文の原稿を完成させこれから投稿しようという段階に至っている。これらは博士課程1年の学生2名それぞれとの共同研究であり、2つ目のものには本学の横田智巳講師も加わっている。特に、Dirac方程式についての結果は、昨年9月に参加したコルトナ(イタリア)での研究集会の報告集への投稿を計画している。4階の楕円型作用素についての結果では、そこで使った不等式のひとつは最近の小澤-佐々木両氏による論文(近刊)の中心的課題であるL^Pでの不等式のp=2の場合であることが判明した。これは小澤徹教授(早大)が指摘してくれた。またもう少し時間をかける必要はあるが、閉線形作用素のholomorphic familyについての故加藤敏夫教授の2つ結果(1984)のうちの1つ(主として1階の微分作用素に適用可能なもの)をHilbert空間からBanach空間に一般化したBorisov-Okazawa(1997)と同様の方針に従って、加藤先生の2つ目の結果(主として2階の微分作用素に適用可能なもの)をBanach空間に一般化する考察が軌道に乗っている。その一部は研究代表者がドイツのOberwolfach(1988)での集会で発表して以来いずれはやるということでそのままにしてあったものなので格別な感懐がある。この課題を担当してくれた修士2年の学生は博士課程に進学することになったので継続研究が可能である。これもその学生の学位論文の一部になるものと期待している。
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