研究概要 |
今年度は,昨年度から準備したものも含めて5編のプレプリントを完成することができたが,6番目のものは未完成のまま次年度を迎えてしまった.1番目と2番目のものは出版が受理された. 1)応用の対象として線形Dirac方程式を選んだ双曲型発展方程式の抽象論は平成21年4月末に,前年9月にあったコルトナ(イタリア)での集会の報告集に投稿したので同年11月には掲載受理の返事をもらうことができた.これは博士課程の院生の吉井健太郎との共同研究である.この研究はOkazawa(1998)の抽象論を改良するものであるが,直接Schrodinger方程式には適用できない.Schrodinger方程式に適用できる抽象論を開発する前に交付申請書の研究目的1)で述べたBaudouin-Kavian-Puel(2005)の形式的計算を厳密に遂行することから始めることにした.他にもいろいろあった不備を訂正した結果は平成22年3月に投稿にこぎつけた(5番目のプレプリント).Schrodinger方程式に適用できる抽象論の開発は次年度以降の課題である. 2)複素Ginzburg-Landau(簡単にCGL)方程式のL^2強適切性についての論文をR.Temam教授の古希記念号に投稿したのが平成21年8月末であり、掲載決定の返事を平成22年1月はじめにもらうことができた.こちらは横田智巳講師との共同研究である(11.研究発表[雑誌論文]の2番目).この研究は数年前からいずれは完成させるつもりのものだったのでひと安心というところである.即ち,CGL方程式の最も基本的問題に対するL^2理論が,非線形項の単調な場合と非単調な場合のいずれについても,劣微分作用素の方法によって取り扱えることを確立したことになるわけである. 3)11.研究発表[雑誌論文]の1番目は,本来の課題で行き詰まったときのものとして行なっていた研究の成果が日の目を見たものであるが,本来の課題で生きてくることも十分ありうると思う. 4)3番目と4番目のプレプリントはそれぞれ重複Laplacianの,原点で特異なポテンシャルによる摂動と非べき乗型の非線形項をもつ非線形Schrodinger型方程式に関するものである.
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