リー群のユニタリ表現論において基本的な手法の一つである「軌道の方法」に基づき、フランス・メッス大学のJean LUDWIG教授およびチュニジア・スファックス大学のAli BAKLOUTI教授と、指数型可解リー群のユニタリ表現に関連する共同研究を続行した。11月にはLudwig教授を主催者の1人とする国際会議がマルセイユであり、その際3人で議論した。また2月には彼等2人を同時に飯塚の産業理工学部に短期招聴し、共同研究を続けた。得られた主要な結果は次の2つである。 1. 指数型可解リー群の既約ユニタリ表現を軌道の方法により実現するとき、その同値類は途中で利用する偏極環の選び方に依らない。そこで2つの偏極環を選び2通りに実現するとき、その間の繋絡作用素を具体的に記述することは筆者長年の懸案であった。形式的な繋絡作用素に現れる積分の収束性を示し、この問題を解決したと思っていたが、途中の推論にミスがあった。現在修正の最終段階にある。 2. 指数型可解リー群の単項表現が離散型の重複度をもつとき、Penney型のプランシュレル公式を証明した。この結果は不変微分作用素環に関するDuflo予想の確立に利用できそうである。 これらの結果は現在共著論文にまとめているところである。その他の実績としては、指数型可解リー群のユニタリ表現論について、つまり軌道の方法についての日本語および英語の著書を準備中である。内容としては、リー群・リー環の基礎理論、Mackey理論、I型可解リー群の正則誘導表現、指数型可解リー群のユニタリ表現に対する軌道の方法、単項表現および部分群に制限された表現の既約分解、Frobeniusの相互律、プランシュレル公式、冪零リー群の単項表現に対する可換性予想、冪零リー群のユニタリ表現の部分群への制限に対する可換性予想などである。
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