リー群のユニタリ表現論において基本的な手法の一つである「軌道の方法」に基づき、フランス・メッス大学のJean LUDWIG教授およびチュニジア・スファックス大学のAli BAKLOUTI教授と、指数型可解リー群のユニタリ表現に関連する共同研究を続行した。以前3人で専門誌に投稿した繋絡作用素に現れる積分の収束性の証明にギャップが見つかり、その修正に全力を傾注しているが、いまだ成功していない。10月にJean LUDWIG教授を飯塚に短期招聘し、同時期に鳥取大学に招聘されていたBAKLOUTI教授にも飯塚に来てもらい、この問題の共同研究を行った。同時に以前からの共同研究継続として、指数型可解リー群の単項表現がその既約分解において離散型の重複度をもつ場合、Vergne分極環から構成された既約ユニタリ表現との間のPenney超関数に現れる積分の収束性、問題の単項表現に対するPenney型のプランシュレル公式の具体的記述、随伴する不変微分作用素環の可換性、更に、Duflo問題の一定式化に対する反例の記述などを共著論文として纏め、現在専門誌に投稿中である。また、冪零リー群の単項表現および既約ユニタリ表現の閉部分群への制限について、これらの表現の既約分解が有限重複度をもつ場合、随伴する可換な不変微分作用素環はある種の不変多項式環と同型であろうという、いわゆる多項式予想について、11月にオランダ・ライデンにおける日蘭ワークショップでこれまでの研究成果を発表するとともに、共著論文の仕上げに着手した。 これまで科学研究費補助金を受けながら継続してきた可解リー群のユニタリ表現と調和解析に対する軌道の方法についての研究をまず和書の形で出版し、更に内容を増補して英語版で出版する計画である。今年度はまず和書の方を12月に数学書房から「指数型可解リー群のユニタリ表現-軌道の方法」として出版した。
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