研究概要 |
私の研究は、ヒルベルト空間上の有界線形作用素で最も重要な作用素である正規作用素(自己交換子=Oで定義される)の一般化にあたる種々の非正規作用素について、それぞれが正規作用素のどのような性質を受け継ぎ、どのような性質を失っているかを作用素のスペクトルや関連する固有空間、不変部分空間への制限の性質から調べることである。ある性質を持つような作用素族に共通する性質を求めその性質で「ある性質」が導くような性質が何なのかを研究している。 今年度は、正規作用素の重要な性質の1つである「重可換性」を導いたことで有名なフグレデ・パットナムの定理について、正規作用素の拡張である(p,k)-quasihyponormal作用素やスペクトル作用素を含む作用素族とドミナント作用素に対してもフグレデ・パットナムの定理が成立することを示し、さらに(p,k)-quasihyponormal作用素がワイルの定理を満たすこと、作用素に関するスペクトルの性質(I)、(I')、(II)を定義し性質(I)⇒性質(I')⇒性質(II)⇒Bishop's property(β)& the single valued extension propertyが成立することを示し、その系としてパラノーマル作用素がBishop's property(β)とthe single valued extension propertyを持つことを示した。また、作用素のノルムの一種である作用素の数域半径に着目し、作用素とその作用素の共役作用素の数域半径が共に1以下である作用素はユニタリ作用素に限ること、作用素とその共役作用素の数域半径が共に1以上である作用素は恒等作用素に絶対値が1である複素数を掛けて得られる作用素に限ることなどを示した。
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