Cスター環上の流れ(1径数自己同型群)に関してはいろいろな性質が考えられている。そのひとつは内部近似可能という性質で、統計力学モデルから多様な例をもつことも分かっている。しかしながら一般の状況でまだ有効な判定条件、流れ固有の内在的な特徴づけ、をもたない。それと関係がある性質として、準対角という性質を強弱ふたつ導入した(quasi-diagonalとpseudo-diagonal)。これは作用素論に淵源をもつ概念を流れの場合に適用したものである。具体的には、Cスター環と、流れを惹起する非有界の自己随伴作用素とが同時に「準対角的」とみなされる性質となるように定義した(これは計算可能性と関係ある性質とみなされる)。その過程で今の場合定義としてはふたつの可能性があることに気づいた。Cスター環が準対角的で流れが内部近似的ならばその流れは弱準対角的である。Cスター環が単位元をもち流れが弱準対角的ならば、その流れは平衡状態をもつ。流れがAF流れならば、それは強準対角的である。ただし、準対角という概念は連続な変化に対して不変である。このことより、少なくともCスター環がAF環のように射影をたくさんもつ環ならば、内部近似性と弱準対角性とは大いに関係があると予測されるが、その関係をつまびらかにすることは出来ていない。また強弱二つの定義を導入したのだが、弱準対角がほんとうに強準対角にならないことは示していない。しかしながら様々な例を与えるとともに、Cスター環が準対角である場合に知られた幾つかの結果(主にVoiculescuによる)をこの場合に拡張した。以上はD. W. Robinson氏(昨9月に来日)との共同研究である。
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