研究概要 |
1. リーマン面の共形構造全体で成るタイヒミュラー空間の幾何学的性質を研究した。ヴェイユ・ピーターソン計量に関して計量的完備化されたタイヒミュラー空間を複数張り合わせて得られる、いわゆるCoxeter複体の幾何学構造を考えることによって、測地的完備という、幾何解析を自然な形で行うだめに必須な条件を作り出すことができることを論文にまとめた。この空間上の幾何学的、解析的、および代数的性質の相関関係に着いて来年度も引き続き研究する。 2. 米ミネソタ大学のRobert Gulliver氏との共同研究として、ユークリッド空間内のグラフの曲率に関する研究を継続した。グラフは各頂点において、必ずしも局所ユークリッド性を持たないが、グラフの二重被覆(オイラーの一筆書き)を考えることによって、頂点の持つ曲率に関する特異性を解消した。特に本年度は昨年度に得られた研究結果の改善を図り、新たグラフの包含関係から導かれるsub-additivityの結果を得た。 3. 幾何学的測度論の文脈で現れる(M, O, δ)極小集合の存在定理の研究を進めた。一般に極小曲面はその内点で実解析的な振る舞いを示すが、石鹸膜が複数交差する自由境界としての特異点集合の実解析性を、調和写像と共形構造の変形理論の観点から理解試みている。極小曲面を単体として持つ単体的複体の構造は、実解析的な性質を自然に含有していることが変分法の観点から期待され、今年度はその偏微分方程式的観点から考察を進めた。
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