研究概要 |
交付申請書に記載した今年度の研究目的は,形状記憶合金で作られるセンサーの解析とコンクリートの中性化の解析である。以下,この2点に関する研究成果を述べる。 ・形状記憶合金で作られるセンサーの解析:センサーに対する数理モデルは既に確立している。そこでの未知関数は,変位と温度である。温度が既知の解の存在定理を,先行研究のものより一般的な仮定のもとで証明することができた。また,今年度,従来未解決であった温度が未知の場合も,数理モデルの解の存在と一意性を示すことができた。ただし,この結果において,初期変位と初期速度が小さいことを仮定している。これは,温度が既知の場合から類推すると,不十分な結果であり,この結果の改良が,次年度の最重要課題となった。 ・コンクリートの中性化:初期値が有界な場合は,既に研究されていたが,今年度,初期値に2乗可積分性を仮定するだけで,解の存在を示すことができた。これは,本研究の計画時では予想していなかった問題であり,新たな問題を発見できたことは大きな収穫であった。さらに,この場合,解の一意性が未解決なので,次年度以降,この問題についても考えていく予定である。そして,当初の計画通り,中性化の初期地点を原点に近づけた際の,解の挙動についても研究する。 ・最後に,研究成果の高校生への紹介について報告する。今年度8月に高校生対象の高校数学セミナーにおいて,非線形現象の解析の研究を通して得られた知見をもとに,実験と証明とを組み合わせた内容を取り扱う授業を実践し,研究成果を公開することができた。
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