研究概要 |
当初,昨年3月に計画していた本研究の成果の高校生等に対する情報公開が,東日本大震災の影響で中止となったことを受け,本研究を今年度に繰り越した。以下,今年度の成果を述べる。 ・平成23年9月信州大学で開催された数学教育学会において,6件の発表を行った。発表はすべて本研究によって得られた数理モデル導出における知見を基に,数式を用いた解析の部分を中学生や高校生にも分かるよう授業実践した結果の報告である。 ・コンクリート中性化問題について,下記3点の結果を得ることができた。 1)従来の1次元コンクリート中性化問題において,ヘンリーの法則が定常状態においてのみ成り立つという仮定の下,数理モデルを構築してきた。そして,その仮定は線形の方程式で記述されていたが,数学的な考察により,非線形方程式で記述されるヘンリーの法則を伴う数理モデルの適切性を示すことができた。このことにより種々の場面で非定常ヘンリーの法則を扱うことでできるようになった。 2)中性化の深さが時間の平方根に比例することが,実験結果から分かっていた。本研究において,昨年度,これが正しいことを,境界条件が時間に依存しない場合に限り,数理モデルを用いて示すことができた。この問題に対し,本年度,境界条件が時間に依存する場合でも,同じように中性化深さが時間の平方根に比例することが分かった。 3)多次元問題において,水分輸送の方程式を導出し,その方程式に対する初期値境界値問題に適切性を示した。現在,二酸化炭素の質量保存の法則と組み合わせた方程式系の考察が課題となっている。
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