研究概要 |
熊本大学の木村弘信氏により,5の分割に応じた2階の線形常微分方程式が考察され,そのモノドロミー保存変形から7つの非線形方程式が導かれた.(以下,この方程式を木村のガルニエ系と呼ぶ).また研究代表者により,木村氏の考察した線形方程式を退化させたものが考察され,そのモノドロミー保存変形から8個の非線形方程式が導かれた.(以下,これを半整数型ガルニエ系と呼ぶ).さらに木村のガルニエ系のうち,(4,1)型,および(3,2)型と呼ばれる方程式と,研究代表者が見つけた(5/2,1,1)型方程式の有理解がすべて求められ,これらの方程式が双有理変換で移りあわないことが示された.2009年度では,これらの研究に引き続きG(3,1,1)型ガルニエ系の有理解を調べた.その結果,シュレジンガー変換で移りあうものを同一視すれば,有理解は3種類に分かれることが分かった.特にこの中のひとつはIV型パンルヴェ方程式のリッカチ解から得られること,他の二つはG(3,1,1)型ガルニエ系に含まれるリッカチ解の特殊ケースとして得られること,また,IV型パンルヴェ方程式の岡本多項式で表される解は,G(3,1,1)型ガルニエの有理解でないことなどが分かった. ガルニエ系に含まれる有理解は,双有理変換で移りあう方程式の分類に役立つほか,ガルニエ系が持っている変換群の構造を調べるときにも有効である.特に今回得られたG(3,1,1)型ガルニエ系の有理解のうち,リッカチ解の特殊ケースとなっている2つの有理解は,適当な双有理変換で移りあうのではないかと推測される.そして,もしこの推測が正しい場合,この変換はG(1,1,1,1,1)型ガルニエ系の「津田変換」と呼ばれるものを退化させたものに相当すると期待される.このような考察から,今回の有理解を求めることは意義のあることだったと思われる.
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