研究概要 |
「研究目的」にも記したように,"微分方程式で定義される新しい特殊関数を見つけ,その性質を調べる"と言う観点に立って,「高階線形常微分方程式の合流操作とモノドロミー保存変形の退化」に関する下記のような研究を行った. 申請者と琉球大学の眞野智行は,「合流操作を考えた場合,従属変数に何らかの関数を掛ける自由度や,変数変換の自由度によって2階の線形常微分方程式では変形パラメータの個数は不変となるが,3階以上の場合ではそのようなことは起きない」と言うことに気付いた.そこで眞野氏とともに,原点と無限遠点,および1で確定特異点を持つ3階のフックス型線形常微分方程式を考え,(この方程式が変形パラメータを持っていないにもかかわらず)この方程式を退化させると,一つの変形パラメータを持つ線形方程式になること,および,この方程式のモノドロミー保存変形からVI型パンルヴェ方程式が得られることを示した.また,退化させる前のフックス型方程式のシュレジンガー変換を退化させるとVI型パンルヴェ方程式になることも示した.なお,"退化させる前のフックス型方程式のシュレジンガー変換"は,適当な変換でArinkinとBorodinが導出したE_6型のパンルヴェ方程式になると思われるが,その詳細は現在研究中である.また,今回用いた手法を使えば,原理的には,差分ガルニエ系も具体的に構成することができるが,こちらの方も現在研究中である.
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