研究概要 |
昨年度は、作用素環Mの二つの部分環A,Bに対する条件付相対エントロピーh(A|B)を導入し、特に、Mが、最も基本的な作用素環である行列環で、A,Bがその極大可換部分環であるときに焦点を絞り、A,Bの間の条件付相対エントロピーh(A|B)は、Bがユニタリー行列uを通してuAu*と表されるという事実を用いて、最近数理物理で注目されているuから導かれるunistochastic行列に対するエントロピーと一致するという結果を得た。 本年度は、対象となる行列環Mを連続型有限因子環とし、極大可換部分環A,Bを部因子環に置き換えて、昨年度の議論を発展させた。そのとき、unistochastic行列の役割を果たすのは、Mの内部自己同型写像であると見做して、内部自己同型写像θに対して、θと部分因子環Nに密接に結びついた量として、H(θ;N)の概念を、unistochastic行列に対するエントロピーを念頭において導入し、部分因子環Nとθ(N)に対して、h(N|θ(N))とH(θ;N)との、関係について、研究した。Jonesの指数理論において、最も基本的な役割を果たす部分因子環は外部自己同型写像のなす有限群の固定点環として、表れる。言い換えると、元の環Mは、Nの有限外部自己同型写像群Gによる接合積として、表される。このとき、Mの内部自己同型写像θに関して、Nとθ(N)との関係は、群Gの要素を添え字とし、要素が環の元である一種の行列環的な状況にあると、考えるとができる。このようなNとθ(N)に、対して、その関係が、"もっとも、離れた"位置関係にある状態を、H(θ;N)とh(N|θ(N))との値を用いて決定した。それは、両者の値が、一致して、群Gの濃度に等しいときである。
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