研究概要 |
今年度は本研究計画(3年間)の3年目であり、昨年度の研究継続に加え、記号力学系の軌道同型と関連するC*環の研究を集中的に行った。また、温度が必ずしも実数値をとらない複素数に値をとるKMS条件をC*記号力学系に対して研究を開始した。位相的マルコフシフトの連続軌道同型類とカルタン部分環を保存するCuntz-Krieger環の同型類がきちんと対応することが、論文Orbit equivalence of topological Markov shifts and Cuntz-Krieger algebras、(Pacific J.Math.246(2010),195-225により証明され発表された。この論文では、片側位相的マルコフシフトの充足群も研究された。この論文の結果はすぐに、マルコフとは限らない記号力学系に一般化されて、論文Orbit equivalence of one-sided subshifts and the associated C^*-algebras(Yokohama Mathematical Journal),56(2010),59-85に発表された。また昨年度からの継続的な課題として、soficではない記号力学系からできる単純C^*-環のK-群の計算をさまざまな例で計算していたが、あるコード系からできるサブシフトから構成されるC^*-環が単純であることを証明し、そのK-群も計算できた。まゲージ作用に対するKMS状態も求め論文A class of simple C^*-algebras arising from certain non sofic subshifts,(Ergodic Theory and Dynamical Systems 31(2011),459-482)に発表した。さらに、温度が必ずしも実数値をとらない複素数に値をとるKMS条件を周期的な1係数作用に対して定式化し、C*記号力学系に対し研究した。その結果はpreprint:Ergodic properties and KMS conditions on C*-symbolic dynamical systemsにまとめた。
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