研究概要 |
研究代表者高橋は、研究計画の最終年度にあたる本年度において、爆発・凝集現象がもたらす様々な楕円型方程式の爆発解の定性的性質の研究のうち、昨年度に引き続いて、特にそのスペクトル解析的な性質に焦点をあてて研究を推進した。今までの研究概要として、爆発解の爆発点の位置決めを行う有限次元空間上の関数であるハミルトニアンの諸性質が、爆発解に遺伝するメカニズムについて解析を進め、特に1点爆発解の場合に、その漸近的非退化性・漸近的一意性などいくつかの結果を得てきたのであるが、本年度ではさらに進んで、爆発解を含む非線形項を係数関数とする線形楕円型作用素の低い番号の固有値と固有関数の漸近挙動について研究を行い、いくつかの成果を得た。この研究は、より一般的に「係数関数がデルタ関数に収束するような線形作用素の列の固有値・固有関数の挙動はどのようなものか?」という問題の特殊なものとしてもとらえることができ、線形理論としても興味深く思われる。研究推進の途上で、爆発解の漸近解析を行う際の議論に不十分な点のあることが認識され、現在はその部分を補う方策を考察中である。また最近になって、連携研究者鈴木は、Grossi,大塚との共同研究で、2次元リウビル方程式の場合に、「多重爆発点のハミルトニアンの臨界点としての非退化性が、多重爆発解の漸近的な非退化性の十分条件となる」という結果を得た(Grossi-Ohtsuka-Suzuki, ADE(2011))。類似の結果は、高次元での臨界Sobolev型方程式や多重調和作用素を含む高階リウビル方程式に対しても成立するだろうことが十分期待される。多重爆発解のスペクトル解析的研究は現在まで行われていないが、今後の研究テーマとして興味深く、「多重爆発解の大域・漸近解析」として新規に科研費補助金研究課題として構想するにいたった。 本年度4月に高橋はローマ大学のM.Grossi氏を訪問し、特に領域が2次元円環領域の場合に、多重爆発解の爆発点の位置や爆発解の定性的性質について共同研究を開始した。2次元円環領域のグリーン関数が厳密に書き表わせる(Hickeyの公式)ことを用いて、新しい知見がいくつか得られ始めている。
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