研究概要 |
消散型波動方程式はコーシー問題の解は時間発展とともに対応する拡散方程式のコーシー問題の解と同様の挙動をすることが分かっている.この現象を解の「拡散現象」と呼んでいる.本研究はこの解の拡散現象を念頭に,消散型波動方程式の解の時間大域的挙動を調べることを目的としている. 2009年度の研究では,消散項に時間あるいは空間に依る係数がつき,さらに,吸収項として働く半線形項を持つ半線形消散型波動方程式のコーシー問題を考察した.その係数が時間発展や空間遠方で十分速く減衰すると,消散項の働きが弱くなって,解の拡散現象が消滅するが,適当な条件の下で拡散現象が維持される.そのとき,半線形項の指数幕によって挙動が異なってくる.西原-Zhai, J.Math.Anal.Appl.(2009)では,消散項に時間のみに依存する係数がついても,指数幕の臨界指数が定数係数の場合の臨界指数である藤田指数と変わらず,半線形消散型波動方程式のコーシー問題の解が,優臨界指数の場合は,対応する線形拡散方程式の基本解とほぼ同じレートで解が減衰し,劣臨界指数の場合には,対応する半線形拡散方程式が自己相似解を持ち,その自己相似解と同じレートで解が減衰することを示した.これらの結果はほぼ満足すべき結果といえるが,減衰レートが最良である,あるいは漸近形を求めるというところまでは証明出来ていない.空間のみに依存する係数を持つ消散項の場合は,西原によってほぼ最良と思われる解の減衰がすでに求められ,それはCommun.Partial Differential Equationsに掲載が決まっている.証明には巧妙な重み付エネルギー法が使われ,その方法は,Lin-西原-Zhai, J.Diff.Eq.(2010)で,時間と空間の両方に依存する場合で,劣臨界指数の場合の解の減衰率を求めることに応用された.
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