研究概要 |
消散型波動方程式はコーシー問題の解は時間発展とともに対応する拡散方程式のコーシー問題の解と同様の挙動をすることが分かっている.この現象を解の「拡散現象」と呼んでいる.本研究はこの解の拡散現象を念頭に,消散型波動方程式の解の時間大域的挙動を調べることを目的としている. 2011年度の研究は,引き続き,消散項に時間あるいは空間に依存する係数がつく場合の半線形項を持つ半線形消散型波動方程式のコーシー問題を考察した.特に,時間に依存する係数を持つ消散項の場合に,湧出項として働く半線形項を持つ半線形消散型波動方程式の臨界指数を決定することに成功した.優臨界指数の場合の小さなデータに対する時間大域解はすでに本年度に出版された論文において得られている.臨界指数および劣臨界指数の場合の解の爆発を示すことが未解決であった.適当な時間に依存する関数を掛けることによって,Qi S.Zhangによるテスト関数の方法を応用できるようにしたことがポイントであった.その結果,時間に依存する係数を持つ方程式にもかかわらず,臨界指数が藤田指数そのものとなったのは予想外の結果であった.この結果は,J. Lin, K. Nishihara and J. Zhai, Remark on the critical exponent for the semilinear wave equation with time-dependent dampingとしてまとめ,投稿中である.また,この研究も含め,これまでの研究のサーベイとして,4th Mathematical Society of Japan Seasonal Instituteにおける招待講演において発表した.モスクワにおける第8回ISAAC Congressにおいても発表した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はこれまでの研究のサーベイを報告する機会もあったので研究の進展の総括はできたと思っている.そのことをベースに,未解決の問題や,拡散現象から外れて,効果的でない消散項の場合の波動現象を捉える,少なくともその緒を捉える方向で研究を進めていきたい.
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