消散型波動方程式のコーシー問題の解は,時間発展とともに,対応する拡散方程式のコーシー問題の解と同様の挙動をすることが分かっている.この現象を「解の拡散現象」と呼んでいる.本研究はこの「解の拡散現象」を念頭に,消散型波動方程式の解の時間大域的挙動の考察を行っているが,研究期間の最終年度であることから,その後の発展を見据えて研究を行った. 時間変数のべき乗に依存する係数を持つ消散項を持つ半線形消散型波動方程式のコーシー問題では,消散項が効果的な場合に,半線形項の臨界指数を求めた投稿中であった論文が学術雑誌 Discrete Cont. Dynam. Syst.から出版された.引き続き,消散項が非効果的な場合に解の波動現象が期待され,係数の時間変数のべき乗が-1のとき,拡散現象と波動現象の臨界となり,予想される結果なども考察できたが,完全な照明をするには至らなかった.これらのことは,次の研究課題の内容として結実している. 一方,かねてから投稿中であった連立系の消散型波動方程式のコーシー問題に関する結果が,Osaka J. Math. から出版された.加えて,最近発展してきたQi S. Zhang のテスト関数の方法を基にした H. J. Kuiper による解の存在時間の評価が,若い数学者である池田‐若杉によって単独消散型波動方程式のコーシー問題の解の存在時間の評価にも適用され,その方法は連立系の問題にも適用できることが分かった.このような連立系の考察も平成25年度以降の研究課題の内容にも結実している. このように今年度の研究は次年度以降の新しい研究課題の貴重なベースとなった.
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