研究概要 |
伊東は一昨年からE.Seiler氏(Max Planck研究所)と一緒にシグマ模型の質量生成やクオーク粒子の閉じこもりの問題について,繰りこみ群を用いて共同研究を続けてきた。非可換な対称性のときは,繰りこみ群が極めてややこしく未だに解決をみていないが,J.Froehrich等が開発したフーリエ変換を用いるduality変換を部分的に用いることによって,この困難が迂回できることに気がつき,実際最初の数ステップはこの方法がうまくいくことを確かめた。これは伊東の主催する数理解析研究所の共同研究集会で発表され,論文を準備中である。フィールド賞を受賞した,ペレルマンがポアンカレ予想の証明に繰りこみ群のアイデアを使っていることから,幾何学(あるいは相対論)への繰りこみ群の応用といったテーマでも研究を続け,いくつかの雑誌に成果を報告した。繰りこみ群はミクロからマクロにいたる橋渡しとして重要な計算手段で,微視的方程式から巨視的方程式をうる数少ない手法の一つである。上記研究会ではこの方面での最新の結果を,テキサス大学オースティン校のT.Chen教授を招き基調講演してもらい,日本の若手研究者との問題意識の共有につとめた。 寺本は西田孝明(早稲田)と共同で熱移動による対流(ルナール流)が引き起こすパターン形成(味噌汁を沸かすときにできるブロック構造など)をいろいろな境界条件下でしらべた。これは昨年下川助教が発見した同様なパターンの生ずる流体力学現象にも応用できると期待している。
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