研究概要 |
本研究は,水蒸気を含む同期回転惑星大気の循環構造の多様性を探るためのパラメータ実験を行なうものである.同期回転惑星とは半球が常に中心星からの入射放射を受け,反対半球には放射が入射しない惑星であり,中心星の近傍にある系外惑星の多くが同期回転していると予想されている. 昨年度までに,地球の太陽定数の値を与え,同期回転惑星の循環構造の自転角速度依存性の調査を行い,自転角速度の値に応じて循環パターンが変化することを明らかにした.本年度は,そのパラメータ実験を拡張し,同期回転惑星の大気構造の太陽定数依存性の調査をおこなった.使用したモデルは静水圧を仮定した3次元球殻モデル,地球流体電脳倶楽部dcpam5である. 昨年度行なった予備実験では,標準的な解像度で太陽定数を増加させた場合において,鉛直方向の2-grid noiseの振幅が増大し長時間積分が困難となっていた.今年度は,まず太陽定数が増大した場合の計算を可能とするための方策を検討するため,鉛直伝搬する内部重力波のモデル表現が変わるように,鉛直層数とタイムステップを変更したテスト計算を行なった.その結果,鉛直層数を48,タイプステップを30秒とすると,安定して数値計算を実行できることがわかった.この鉛直解像度,時間解像度を用いて,同期回転惑星設定を用いた太陽定数変化実験をおこなった.これにより,太陽定数が地球の値のおおむね1.1倍程度になると暴走温室状態が発生するという結果を得た.また,暴走温室状態が発生する太陽定数の値は,自転角速度の値によって100W/m^2程度変化することもわかった.同期回転惑星設定において,暴走温室状態が発生する太陽定数の値がどのようにして決定されるのかについては,次年度考察をおこなう予定である.
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