研究概要 |
系外惑星気候の多様性の探索を目的として,昼半球と夜半球が固定された同期回転惑星条件において,水惑星大気大循環モデルによるパラメータ実験を行った.今年度の成果は以下の通りである. (A)暴走温室状態の発生条件に関する考察 : これまでの太陽定数変更実験で,暴走温室状態が発生する太陽定数の値は,自転角速度によって100W/m^2程度異なるという結果が得られていた.今年度は,暴走温室状態の発生条件に関する考察を行うため,長波放射分布を調べた.その結果,長波放射量上限値と暴走温室状態が発生する太陽定数の間には明確な対応関係が見られず,相対湿度の値の自転角速度依存性なども考慮する必要があることが示唆された. (B)循環構造の自転角速度依存性に関する追実験:昨年度までの自転角速度変更実験を拡張し,自転角速度による循環構造の変化の様子を詳細に観察するための追実験を行ったところ,多重平衡解が得られる場合があることがわかった.多重平衡解の存在範囲を探るため,当初計画していなかった自転角速度変更実験における初期値依存性調査をおこなった.これにより以下が明らかとなった.自転角速度が小さい順に,4種類の状態があらわれる : (1)昼夜間対流が卓越する状態,(2)超回転が起こる状態,(3)南北非対称な場が振動する状態,(4)夜半球に中緯度擾乱が存在する状態.自転角速度が地球の値の0.75-0.85倍の場合では,状態(3)と状態(4)の両方が解となる. (C)水素を含む大気における放射スキームの実装:多様な系外惑星への適用をめざして,昨年度までに定式化を行った水素大気に関する放射スキームの実装をおこなった.現在の木星大気の平衡構造を求めるテスト計算を行い, 0.1-2気圧の範囲で木星温度構造をほぼ再現できるてとを確認した.
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