本年度は、すばる望遠鏡およびマゼラン望遠鏡(チリ、米国機関が運営)などを用いた観測を実行し、これまでの広視野観測で得られたデータに基づき、輝線銀河や遠方銀河団銀河の分光観測などを行って詳細な解析を行うとともに併せて、遠方銀河の星質量と活動銀河核との関係についても調べた。これまで、約3平方度にわたり赤方偏移z=3.1のLyα輝線銀河探査を行ってきている。とくにSSA22領域では、これまで、この時代では最も顕著な銀河高密度領域と知られているSSA22原始銀河団を含む約2平方度のデータが得られている。これまでの解析から、この高密度領域を中心に、大きく広がったLyα輝線銀河(Lyα Blobs)、Lyα吸収線銀河などの分布の研究を行い大きな成果をえている。本年度は強い輝線銀河の分光観測から、観測された銀河の約反芻にライマンα輝線の分光プロファイルに、長波長側が強いダブルピークの特徴的なプロファイルが観測されること、これらはガスの流出に伴う膨張シェルによる散乱の吸収・効果が原因として考えられることを明らかにした。また、とくに輝線強度の大きい銀河に注目し、輝線銀河等価幅分布の詳しい解析を行い、非常に等価幅の大きい天体の存在を明らかにするとともに、銀河密度との相関を調べて、銀河高密度領域に特に強い輝線を示す銀河が多いことも突き止めた。また、遠方銀河の星質量と活動銀河核の存在比の研究も進め、赤方偏移2-4の宇宙では、太陽の300億倍の質量を超える大質量銀河にのみ明るい活動銀河核現象が観測されること、大質量銀河の内、活動銀河核を持つものの割合が4割に昇ることを明らかにした。
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