本年度は、すばる望遠鏡およびマゼラン望遠鏡などによるこれまでの広視野観測で得られたデータに基づき、とくに遠方銀河団領域における輝線銀河の性質について、さらに詳細な解析を行い、輝線銀河の分布と密度超過の定量的評価、輝線等価巾の分布、星質量と、輝線銀河の関係、銀河活動性などについての研究を広範に行った。高赤方偏移では最も顕著な銀河高密度領域と知られているSSA22原始銀河団を含む領域を中心に、大きく広がったLyα輝線銀河(Lyα Blobs)の分布のこれまでにない広視野での分布と活動性の解明、膨張する中性水素ガスによる散乱を示唆するライマンα輝線の特徴的な分光プロファイルの性質の研究、輝線銀河等価幅分布の詳しい解析と非常に等価幅の大きい天体の存在の研究、輝線等価巾分布と銀河密度との相関についての研究などをとりまとめ、これらを論文として出版、あるいは投稿した。また、近赤外線深探査からは、Lyα Blobsの対応天体として、それぞれの天体に10^9-10^<11>太陽質量を持つ3~7個の恒星成分が付随し、初期銀河形成における重要な段階として理論的に予想されていたマルチプル・マージングの段階を観測的に顕著にとらえることに成功した。また、赤方偏移z=2.4の電波銀河53W002を含む領域での輝線銀河探査の結果を解析し、密度超過領域が存在することを確認するとともに、非常に興味深い天体53W002No18が示す広がった輝線領域の詳細な構造を明らかにする研究も行った。
|