本研究の目的は、星からのフィードバック、とくに原始星アウトフローの効果を考慮して星団形成過程の数値流体力学シミュレーションを行い、星団形成の理論モデルを構築することである。 これまでに行った星団形成の数値シミュレーションから、原始星アウトフローや超音速乱流が分子雲コアに衝突・圧縮して星形成が誘発されるケースがしばしば見られた。このように星団形成領域では、孤立した分子雲コアの場合と全く異なり、外的な影響下で星形成が進むようである。今年度は特に、この外圧の影響を定量化するため、分子雲コアにあたる外圧の影響を詳細に調べた。これらの研究から、外圧に加えて、星団形成クランプ全体の重力場や磁場もコアの形成・進化に多大な影響を及ぼしていることが分かった。野辺山45mアーカイブデータを用いて、近傍星団形成領域であるへびつかい座分子雲のコアの物理量を詳細に明らかにし、それを数値シミュレーションの結果と比較したところ、コアの物理的性質(transonic or subsonicな線幅、ビリアル比)を説明するには、強い外圧と磁場が必要であることが明らかとなった。つまり、分子雲コアの進化を定量的に調べるためには、コア周囲の環境効果を理解する必要がある。本研究成果の一部は投稿論文として出版、および出版準備中である。
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