本研究では若い電波銀河の高周波での電波放射を高分解能で観測し、電波源の各位置におけるシンクロトロン放射電子のエネルギー分布を調査することにより若い電波銀河の活動性と進化の一端を明らかにすることを目的としている。若い電波銀河はコンパクトな構造を持つとともに比較的弱い電波放射を伴うため、広帯域のデータ取得が可能なシステムを用いた高感度での超長基線干渉計(VLBI)観測の実現が必須である。 上記の目的を達成するための基礎研究として、今年度は2008年度に引き続き山口32m電波望遠鏡および韓国宇宙電波観測網(KVN)双方での広帯域観測システムの整備およびそれを用いた試験観測を実施した。2008年度科研費により山口32m電波望遠鏡に新たに設置した観測データ高速大容量記録システムを用いた8GHzでのVLBI試験観測を情報通信研究機構鹿島宇宙技術センター34m電波望遠鏡との間で実施し、観測した活動銀河2天体の相互相関フリンジ検出に成功した。相互相関フリンジの信号雑音比は観測天体の電波強度から予想される値および2008年度に同一天体で実施したVLBI試験観測の結果を再現しており、同システムの信頼性を実証した。 上記の研究と並行して、日本国内VLBI観測網を用いて弱い電波放射を伴うγ線放射活動銀河1天体の観測を行い、2008年度に観測した同種の活動銀河4天体の解析と合わせてこれらの天体の電波での活動性を調査した。その結果、これらの天体が強い電波放射を伴う大多数のγ線放射活動銀河に比べ中心核領域での電波ジェットのドップラー増幅効果が相対的に弱く作用していることを見出した。さらに注意深い解析が必要であるが、これらは活動銀河のγ線放射機構に関する従来のモデルに対し何らかの修正を迫る結果を示す可能性がある。
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