最近の研究により、宇宙のエネルギー密度の大部分はダークマターとダークエネルギーにより占められており、バリオンと呼ばれる通常の物質は、わずか数パーセントを占めるにすぎないことがわかっている。しかし、宇宙の観測は電子を含め、バリオンを通して行われるため、バリオンの物理状態や進化を理解することが重要であることには変わりない。ビッグバン元素合成や、宇宙マイクロ波背景放射の非等方性の研究から、バリオンの総量はわかっているが、現在観測されている銀河内の星やガス、銀河団の高温プラズマの量を足しあげてもその量には足りず、大部分はまだ観測されていない。この未観測のバリオンをダークバリオンと呼び、その検出、物理状態の理解は、宇宙論の重要な課題の一つである。 今年度は、シミュレーションデータ、解析モデルを用いてダークバリオンの物理状態、進化を理解を進めるとともに、ダークバリオンを観測するための専門衛星"Xenia"の提案のための検討を行った。また、物理的状態が似たような状況にあると考えられる銀河団の外縁部の観測データの解析を行った。
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