研究目的は、超高エネルギーガンマ線(TeVガンマ線)を放射する連星系の示す複雑な活動性の起源を統一的に理解するために、性質の異なる3つのTeVガンマ線連星系に対して、衝突恒星風モデルと降着モデルに基づく3次元数値シミュレーションを行い、各モデルの評価を行うことである。平成20年度は、研究の第一段階として、恒星風のシミュレーションにおいては、恒星風に対する重力の影響と放射の影響が打ち消し会うことを仮定し、状態方程式としては等温か断熱の場合のみを考えた。Be星ガス円盤のシミュレーションにおいては等温を仮定した。主な結果は次の通りである。 1.PSR B1259-63(Be星と中性子星の連星系で、離心率0.87という非常に細長い軌道を持つ) Be星ガス円盤とパルサーの潮汐相互作用の3次元SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)シミュレーションを行い、この天体ではBe星ガス円盤は近星点付近のパルサー軌道を越えて広がっていることがわかった。さらに、数値結果を用いて粒子加速の起こる場所を推定し、そこから期待される高エネルギー放射を計算した。その結果、電波、X線、ガンマ線光度がふた山構造(近星点前後でピークになる構造)を持つことがわかった。この結果は観測と定性的に一致する。 2.LS5039(O型星とコンパクト天体の連星系であるが、コンパクト天体が中性子星かブラックホールかはわかっていない)降着モデル(O型星恒星風のブラックホールへの降着)の立場に立ち、3次元SPHシミュレーションを1周期に渡って実施した。その結果、 (1)ブラックホールへの降着率は解析解と良い一致を示す、 (2)得られた降着率はジェットを放出するのに十分な値であり、マイクロクェーサーモデルと矛盾しないことがわかった。
|