研究概要 |
超高エネルギーガンマ線(TeVガンマ線)を放射する連星系の示す複雑な活動性の起源を統一的に理解するために、性質の異なる3つのTeVガンマ線連星系に対して、衝突恒星風モデルと降着モデルに基づく3次元数値シミュレーションを行った。シミュレーションは、光学的に薄い場合の放射冷却を取り込み、分散処理を行うために部分MPI化したコードを用いて行った。主な結果は次の通り。 1. PSR B1259-63(Be星と中性子星の連星系) パルサー風、Be星恒星風、Be星ガス円盤の間の複雑な相互作用を、Be星ガス円盤の密度を変えて調べたところ、ある密度を境にして衝撃波面の大域構造が大きく変化することがわかった。ガス円盤の密度が小さいときには、,ガス円盤は力学的に重要でなく、衝撃波面の構造はパルサー風とBe星恒星風の相互作用により決まる単純な形状をとる。ところが、ガス円盤の密度がある値を超えると、パルサー風はガス円盤を吹き飛ばすことができなくなり、結果としてパルサーがガス円盤に衝突する現象が生じる。シミューションのデータを用いて放射計算を行ったところ、そのような衝突の時には、パルサーがガス円盤の物質に囲まれ、大さな非熱的放射が出るという結果を得た。これは、なぜ超高エネルギーガンマ線連星系にBe星を持つものが多いのかという問題に一つの解答を与えるものである。 2. LSI±61 303(Be星と中性子星かブラックホールの連星系) 衡突恒星風モデルに基づいたシミュレーションを1周期にわたって行い、その結果を降着モデルの結果と比較したところ、モデルの違いがBe星ガス円盤の構造に観測可能な違いを与えることを見出した。 3. LS 5039(O型星と中性子星かブラックホールの連星系) 降着モデルに基づき高エネルギーガンマ線放射を計算し、観測をほぼ説明できることを見出した。
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