研究課題/領域番号 |
20540242
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
新田 伸也 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (30377121)
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キーワード | 宇宙物理 / 太陽物理 / 地球電磁気 / プラズマ物理 |
研究概要 |
研究目的は、代表者が提唱している磁気リコネクションの新モデル「自己相似モデル」を、主に「ひので」のデータ解析によって検証する事である。 H23年度の計画は以下のようであった。 1彩層蒸発に関するデータ解析 2彩層蒸発に関する現象論的予言 3モデルの相対論化 本モデルの排他的特徴は、エネルギー解放に特徴的時間変動を伴う事である。磁気リコネクション加熱の時間変動履歴が蒸発流の構造に反映されている事が期待される。「ひので」XRTのデータを用いて、13例の彩層蒸発現象の解析を行い、論文Nitta et al.2012として発表した。蒸発流の時間発展と構造を「ひので」が検出可能である事を実証したことに意義がある。 モデルから予言される特徴的な蒸発流構造を実際の現象で検出することを計画していた。計算機シミュレーションにより検討した結果、自己相似モデルから予言される温度域では、蒸発流内部の構造は短時間のうちに熱伝導によって均されてしまい、高頻度で発生する10Mmスケールの現象で観測的に検証する事は困難であることがわかった。現在太陽は異常な低調期にあるため、滅多に生じない大規模な蒸発流発生を待っての検証にはリスクを伴うので、以下のように他の現象での検証を優先して検討する事にした。 高エネルギーの現象(マグネターフレア、AGNフレア、GRBなど)での検証を期待して、モデルの相対論化を行った。初期成果について、日本天文学会春季年会にて講演した。また名古屋大GCOEセミナーにて招待講演した。 銀河内の複雑な磁場構造を反映した銀河風は、終端衝撃波後流において、内部の磁力線の折り畳みによる磁気リコネクションを引き起こす事が期待できる。このようなサイトでモデル検証する事をも検討するため、銀河風のモデル構築の研究を開始した。初期成果について、日本天文学会秋季年会にて講演し、現在査読付き論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進展の結果、上記のように頻発する小規模な彩層蒸発でのモデル検証は相当に困難である事が分かって来たので、高エネルギー現象や銀河風での検証をも並行して検討することにしたため。前述の通り、現象論的予言に関する知見の拡大自体は順調に進展しているが、本研究の最大の目的である太陽現象でのモデル検証については、太陽活動の歴史的低調から予定よりも遅れていると言わざるを得ないため、このように自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今太陽活動サイクルの歴史的異常性を踏まえれば、今サイクルでの現象にてモデル検証を完結させる事に拘るよりも、検証のための理論的/現象論的知見を拡大させた方が、最終的には目的達成のために有望であると判断している。今後も、太陽現象およびより高エネルギーの天体現象での検証を目指して、予言的研究を推進する事に重点を置く。同時に、やっと大規模フレアを発生させるようになってきた今サイクルでの現象にも留意し、検証に適した現象が発生すれば、観測データに基づく検証も行う。
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