われわれは背景銀河の形状の高次モーメントを用いて弱い重力レンズの新たな解析法を開発して、銀河団A1689に適用して世界で初めて、高次モーメントがもつ重力レンズ信号を得て、銀河団中心部の暗黒物質分布を明らかにした。一方、宇宙の大規模構造がつくるレンズ効果である宇宙シアの観測は、宇宙の加速膨張の原因であると考えられている暗黒エネルギーの性質を調べる最も有効は方向の一つであるが、宇宙シアの信号は極めて弱く正確な測定が非常に難しい。われわれは背景銀河の高次モーメント法の測定をより正確に行う方法を開発した。 また観測的宇宙論において重要な宇宙マイクロ波背景放射に関してその温度揺らぎの非ガウス性に着目し、ある種のインフレーションモデルが予言する非ガウス揺らぎを計算し、非ガウス性を特徴づけるパラメータがごく狭い範囲をとることを導いた。将来の観測によってこのパラメータが精度よく求まれば、我々の考えたインフレーションモデルの成否が確かめられる。 また観測的宇宙論にとって極めて重要な距離と赤方偏移との関係は通常、一様・等方な時空のものが採用されているが、実際の時空は非一様性であり、その影響についての考察をおこない赤方偏移が1を超えるような遠方では通常の関係と10%程度の差があることを見出した。
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